量子化誤差と面取り

いつも大変興味深く拝見させていただいているブログ悪徳不動産屋の独り言さんのところで,CDの音質についての記事がありました。こちらなのですが。
いつもうーんとうならせられながら拝見しているのですが,「儀礼的無関心」よろしく,敢えてコメントとかはしないようにしていました.しかし,今回のは,私の本職関連についての,まさに,目からウロコが落ちたというべき表現を拝見したので,トラックバックさせて頂こうと思ったわけです。
デジタル化された音源に対しての違和感をおっしゃっておられるのですが,その表現としての「面取り(角を削り落とす処理)をしてない木材や大根のように、音が尖っていて聴き心地が悪いのだ。」という表現についてです。これは,本当に秀逸な表現だと思います。
ねこ☆はもともと制御/計測工学なエンジニアなので,この辺は学生時代に授業で教えられたのですが。
ある値を計測し,評価する際に,それをデジタル表現する際には,必ず,量子化という作業を行います。これは,要するに,ある桁数に丸め込もうとするようなもので,ある計算機が小数点以下4桁しか扱えないとすると,実際の信号が小数点以下8桁まであっても,強引に4桁までに(四捨五入などで)丸め込んでしまうわけです。「丸め込む」というと聞こえはいいのですが,要は,信号処理を行う機器の性能上の都合で繊細な表現ができないので,それに近い大雑把な表現で許してくれ,と言っているに等しい処理です。
これは,裏を返せば,機器を安く作るには,性能の劣る計算機を用いればよいわけで,そちらの都合から,実際の音楽信号を扱える精度を落としている場合がある,というわけです。
で。
悪徳さん*1が感じた違和感はなにかというと,「技術者が人間を軽視した結果から生じる違和感」なのではないかなぁ,と思います。
つまり,処理できる信号精度が低ければ低いほどコストは低減されるわけですが,一方で,あまり低くすると,聞く人が違和感を覚えるわけです。
要は,その精度を見誤ったのではないか,人間の分解能を軽視しすぎたのではないか,と思うわけです。
確かに,CDが普及したことによって音楽の普及は進みましたが,それは裏を返せば,CD音質でよければ,これだけ普及できますよ,ということを示しただけにすぎないのではないかと思います。
CD音質で満足できない人は確実に(市場と呼べる大きさで)存在するわけですから,技術者としては,CD音質を超えるモノを生み出す努力をしなくてはならないと思います。
なんかとってもまとまりのない文章ですが,制御工学やさんとしてはかなーり考えさせられたので,書いてみました。また追記するかもです。

2004.11.28追記:CaHDToolsの実験をしてて,間違ってコメントを消してしまいました(T_T せっかくコメントいただいたみなさま,ごめんなさいです.....。

*1:というと表現が悪いのですが,他に表現のしようもないので許してください(^-^;;