個別発表:学校における個人情報の取り扱いの実体と問題点

学校は個人情報の宝庫!という点から始まった報告です。児童・生徒本人の個人情報に加え,家族構成,保護者勤務先,保険証番号*1とか,大量にある,と。因果関係ははっきりしていないものの,名簿が盗まれた翌日に,その名簿にあった生徒宅に空き巣が入った,という話もあるそうです。

発表内容

OECDガイドラインに沿った調査報告で,なかなか面白い結果です.

データ内容の原則

小学校より中学校のほうがデータ内容の管理がしっかりしている.高校入試があるので,データの必要性がはっきりしていることが影響しているからではないか.

安全保護の原則

小中問わず,8割以上はきちんと管理できていない.持ち出しについても,指導要録*2などの重要物以外は許可不要である.
私物PCの持込禁止は8割,原則禁止だが黙認,が2割。教員用のPCの予算がつかないので校長も黙認している,という話。
ウィルス対策って何?という人もいる.スパイウェアについては推して知るべし.
カメラ付携帯電話の持ち込みは9割以上で許可.

公開の原則

データ収集の実施方針を公開し,利用目的などを明示しているのは,わずか2割程度.

個人参加の原則

異議申し立て権利は1割程度しか保障されていない

教育他

個人情報保護条例を読んだ経験:8割方「なし」,研修も8割方「なし」.そもそもそういう機会がない.

個人情報が記載された一切の書類,データを学校外に持ち出せない場合の影響

サービス残業が増える(持ち帰り残業が移転しただけだが),生徒への対応時間減少(個々の指導,進路指導),保護者とのコミュニケーション時間の減少

まとめと質疑応答

まとめ

本の学校性善説だが,悪意ある者から見ると極めて無防備な場所.日本の学校は教科指導以外に生活指導も教師の役割になっているので,仕事と私生活との境界が不明確なのも,情報の適正管理に対しての障害になっているとのこと.

質疑応答

Q:進学校が予備校にデータを流した話についての意見は?
A:学校の現場では,「先生が持っている情報は先生のもの」という意識が根強く,その点の意識改革が重要ではないか.学校は,児童生徒の情報をDB化しているところはほとんどない.DB化されたとしても,全ての情報が格納されるわけではなく,各教師の役割に応じて分散している(生活指導用の情報は生活指導の先生に,等々).


現場の雰囲気がつかめて,大変興味深い発表でした.

*1:遠足とかいくときにコピー提出させますよね。

*2:当該児童生徒が卒業後も15年間保存されるもの